トルクレンチは、締め付けトルクを正確に管理するための大切な工具です。
でも、使い方よりも“保管とメンテナンス”のほうが重要って知っていましたか?
ここでは、DIY整備でも長く正確に使うためのポイントを解説します。
1️⃣ トルクレンチは「測定器」扱いで考える
トルクレンチはスパナやラチェットとは違い、**精密なバネ(スプリング)**が中に入っています。
そのため、扱い方を間違えるとトルク値が狂ってしまいます。
基本ルール:
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落とさない(衝撃厳禁)
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分解しない
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使用後は「最低トルク値」に戻す
特に最後の「最低値に戻す」は、内部バネの癖を防ぐための最重要ポイントです。
例えば「40〜200N・m対応」なら、作業後は40N・mまで戻して保管します。
2️⃣ 保管方法|湿気と温度変化を避けよう
✅ 理想的な保管環境
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直射日光・高温多湿を避けた工具箱または専用ケース内
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金属製引き出しよりも、樹脂ケースや布カバーのほうが結露に強い
🚫NGな保管例
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夏場の車内(内部温度60℃以上になる)
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湿気の多いガレージ床面直置き
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オイルやグリスの飛散範囲に放置
トルクレンチのグリップ内部には潤滑油が使われており、高温環境で劣化が早まります。
3️⃣ 定期的なメンテナンス|DIYでもできる範囲
🧰 使用後の手入れ
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汚れや油分を柔らかい布で拭く
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可動部(ラチェットヘッドなど)に軽く潤滑スプレー
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最低トルク値に戻してケースへ収納
⚙️ 使用頻度による点検の目安
| 使用頻度 | 校正チェック目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 毎週使う(整備士レベル) | 年1回 | 校正機関での点検推奨 |
| 月1回程度(DIY整備) | 2〜3年に1回 | 誤差±5%以内なら実用可 |
| 年数回(タイヤ交換など) | 3〜5年に1回 | ズレがないか感覚で確認 |
4️⃣ 精度を守るための注意点3つ
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最大トルクで締め付けっぱなしにしない
→ 内部バネが伸びたまま固着し、精度が狂う原因。 -
指定トルクをオーバーしない
→ 200N・mのトルクレンチを250N・mで使うと永久変形の恐れ。 -
締めるときに“カチッ”を何度も鳴らさない
→ カチッ1回で十分。連続で鳴らすと過トルクになります。
5️⃣ もし精度が不安になったら?
DIYでの簡易チェック方法:
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トルクを一定値に設定し、既知のトルクボルトで締めてみる
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他の新品トルクレンチと比較して“カチッ”のタイミングを確認
それでも不安なら、メーカーや工具店での校正サービスを利用しましょう。
KTCなら本社または販売代理店経由で校正受付が可能。
Snap-onは担当バン(販売トラック)が定期的に校正対応を行っています。
🔩 まとめ|「戻す・拭く・しまう」で寿命が変わる
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使用後は最低トルク値に戻す
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湿気の少ない場所で保管
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年1〜3回のメンテで精度を維持
トルクレンチは1本数万円する精密工具。
正しい保管と手入れで10年以上使えることもあります。
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