ほぼすべての車のフロントに採用されるディスクブレーキシステム。ブレーキパッドは交換したけど、ブレーキローターは交換しなくていいの?
そんな疑問にお答えします。ブレーキローターの寿命や、交換時期とそれにかかる費用などを解説しています。
ブレーキローター/ブレーキディスクとはご存じですか?
ブレーキ時の熱エネルギー
車のブレーキシステムは、タイヤの回転する力を熱に変換する仕組みと言い換えることができます。
その放熱板の役目を果たすのがブレーキローターです。
ブレーキディスクとも呼ばれています。
100km/hで走る1.5tの車が停止するまでのエネルギーは、1.5リットルのペットボトルの水を沸騰させるだけの熱量を発生します。
レーシングカーの300km/hからのフルブレーキでは、なんとお風呂のお湯を沸かせるほどの熱量が発生します。
ブレーキローターの性能とは、走行中の車が持つ膨大なエネルギーを、摩擦により熱に変換し、どれだけ効率よく空気中へ放熱してやるかがポイントとなります。
そのため、空気との接触面積を増やし、内部に通気用の空洞を設けた、放熱性に優れるベンチレーテッドブレーキローターや、安定した摩擦力を得るための加工が施されたスリットローターやドリルドローターが使われるのです。
高速域からのフルブレーキでは、その熱量でローターが赤熱化する場合があります。
ドラムブレーキのように自己倍力機能が無いため、制動力において劣りますが、その放熱性を伴う特性から水分が付着してもすぐに乾燥するというメリットがあり、近年の自動車ブレーキシステムの主流になっています。
ブレーキローターとブレーキディスクの交換時期は?
ブレーキローターは、ブレーキを踏む度に徐々に削られ摩耗していきます。
そのため、ブレーキローターの交換時期は、使用頻度やブレーキパッドとの相性で大きく変わることになります。
スポーツ走行では摩耗は激しくなりますし、低速とはいえ加減速を繰り返す街乗りでも寿命は短くなりがちです。
スポーツブレーキパッドなど、高い制動力を発揮するパッドを装着していても、やはりローターの摩耗は進みやすくなります。
ブレーキローターに刻印された使用限界の厚さまで摩耗した状態が寿命になります。
国産車の一般的な使い方であれば、およそ10万km程度を目安に交換時期になります。
おおよそブレーキパッド2回の交換に対してブレーキローターを1回交換する間隔になります。
欧州車、または欧州でも販売される国産車などは、比較的柔らかい材質のブレーキローターが採用されます。
柔らかいローターは磨耗しやすいため、5万km程度でブレーキパッドとともに交換される場合が多いようです。
錆や歪みと対処方法
ヒビ
ヒビといっても段階があります。
表面の細かなヒビはヒートクラックといい、急激な温度変化による熱膨張によるものです。
すぐに大事に至ることはありませんが、進行すると本格的なヒビとなり、ブレーキパッドが引っかかったり、ローターが割れたりしますので早めの対処をおすすめします。
ブレーキジャダー
ブレーキペダルを踏んだときに、ペダルに妙な振動が伝わってくる場合があります。
これはローターの歪みが原因です。
熱などにより歪み、波打ったように変形したローターが、ブレーキペダルに振動を伝えるのです。
スジ
ブレーキローターの表面にスジができる現象は、パッドのカスが一カ所に粒となって固まるメタルキャッチと呼ばれる現象です。
発生した場合はブレーキパッドを外して、固まった粒を取り除く必要があります。
また、ローター全面にレコード盤のようにスジができる場合は、パッドの偏磨耗が考えられます。
絶対的な制動力は落ちますが、距離を走れば自然にそうなるものです。
特に異常がなければ問題はありませんが、そろそろ交換時期が迫っているというサインにもなります。
錆
雨が降った翌日などはローター表面にオレンジ色の錆がついていますが、問題はありません。
ブレーキローターに使われるネズミ鋳鉄と呼ばれる金属は、非常に錆が発生しやすい材質です。
ブレーキを使えば自然に削り落とされますので特に心配はいりません。
ただし、長期間使用しなかった車の完全にさびてしまったローターには注意が必要です。
ローター表面が錆で凸凹になり、ブレーキとして役割を十分に果たせません。
このように、ブレーキローターの寿命はトラブルによって縮む場合もありますので、定期的にチェックをしましょう。
異常が見つかった場合は、ブレーキローターの交換か、もしくはローター表面を機械研磨することで対処します。
交換の仕方
ブレーキは重要保安部品なので、所有者責任の上で自分で交換するか、指定された工場でなければ交換することができません。
交換自体は、ブレーキキャリパーを外して、ハブボルトの共止めされたローターを交換するだけですが、取り付け不備などがあった場合は、即事故につながりますので、信頼できる工場にお任せすることをおすすめします。
交換工賃は1輪あたり4,000円前後です。
リアはフロントに比べて負担が少ないので、交換頻度は少なくなる傾向にあります。
ブレーキローターはさびやすい金属でできています。
パッドのあたり面は、ブレーキを踏めば綺麗になりますが、その他のハウジング部分などは、どうしても錆が目立ってしまいます。
この錆が原因でローターが割れるということはありませんが、精神衛生上よくないので自分で好きな色に塗装される方もいらっしゃいます。
高熱になる部分なので、塗装には耐熱塗料を使いましょう。
部品代は一般的な純正ブレーキローターで1万円~2万円。
純正同等品で安価な社外品も多数販売されています。
ただし、スポーツモデルや欧州車などは、安価な社外品に交換すると、フィーリングの悪化やブレーキ性能の低下をもたらす場合もあるので、注意が必要です。
研磨とは?
高価なブレーキローターや、使用して間もないローターならばブレーキローターの研磨をおすすめします。
ローター表面の錆やクラック、歪などの異常を、研磨することで新品に近い状態に戻すことができます。
ただし、研磨できる量には限界があります。
ローターには使用限界の厚さが刻印されており、仮に18mmと刻印されていれば、それ以下の厚さではブレーキローターは使用できないということです。
多くの場合、面裏でそれぞれ2mmくらいが研磨限界であり、使用限界とされます。
研磨工賃は3,000円~5,000円+脱着工賃です。
塗装について
ブレーキローターはさびやすい金属でできています。
パッドのあたり面は、ブレーキを踏めば綺麗になりますが、その他のハウジング部分などは、どうしても錆が目立ってしまいます。
この錆がトラブルに発展する恐れはありませんが、精神衛生上よくないので自分で好きな色に塗装される方もいらっしゃいます。
高熱になる部分なので、塗装には耐熱塗料を使いましょう。
まとめ
ブレーキは重要保安部品なので、自信がない方は整備士にお願いしましょう。
交換自体は、ブレーキキャリパーを外して、ハブボルトの共止めされたローターを交換するだけですが、取り付け不備などがあった場合は、即事故につながりますので、信頼できる工場にお任せすることをおすすめします。